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文化・言語・文明を超えて1万年間「危険」を伝え続けるデザインとは?

はじめに

Hacker Newsで紹介されていた、「This place is not a place of honor.」が興味深かったのでメモしました。

以下は、"This Place Is Not A Place of Honor"からインスパイアされた動画

This Place Is Not A Place of Honor from Gian Pablo Villamil on Vimeo.

概要

1万年ものあいだ放射性廃棄物をとある場所に保管する必要があり、その間に時代が移り変わって文明や文化が廃れたとしても人類にその土地が危険であることを警告し続けなければいけません。アメリカ合衆国では1981年からエンジニアや人類学者、物理学者、行動科学者が集まり「どのようにして将来、人間による放射性廃棄物施設への侵入を防ぐのか」という問題について議論を重ねました。では、彼らが提案したシステムとデザインとはどのようなものだったのでしょうか。それをまとめた報告書(の要約のようなもの)が今回紹介する記事になります(以下参照)。

f:id:akimacho:20170910192310j:plain Figure 4.3-4. Spike Field, view 2 (concept by Michael Brill and art by Safdar Abidi).より引用

背景

アメリカ合衆国にはWIPP(米国核廃棄物隔離試験施設、Waste Isolation Pilot Plant)という施設があり、ここでは核兵器の研究および生産により残された放射性廃棄物を1万年もの間、半永久的に処分することが認可されています[1]。今回紹介される記事では、この施設がテーマとなります。

f:id:akimacho:20170910220823j:plain Waste Isolation Pilot Plant - Wikipedia より

今後1万年という時間を考えると、様々なことが起こりうるでしょう。例えば、大災害や戦争、もしかしたら宇宙人の襲来など。その中で人間の文明や文化、言語が廃れる可能性は十分にありえます。今から1000年前は平安時代後期になります。1000年の時間を経て平安時代から言葉や服装、文化、価値観など様々なものが変化しました。未来では、私たちとまったく違う言語や文化を持つ人間が暮らしているかもしれませんし、地球規模の大災害により一度人間の文化や歴史が衰退してしまうかもしれません。そのように時代が変化したとしても、放射性廃棄物の危険性は変わらないため廃棄物を保管する施設に人間の侵入を阻止する必要があります。以上が、「どのようにして将来、人間による放射性廃棄物施設への侵入を防ぐのか」という問題に取り組む動機になります。

ちなみに、この記事を読んで調べて行くうちに知ったもう一つの施設として、アメリカには「ユッカマウンテン放射性廃棄物処分場(Yucca Mountain nuclear waste repository)」というものがあります。2014年に公開された映画『GODZILLA ゴジラ』(ギャレゴジの方)の中では怪獣ムートーの繭はこの施設に保管されていました。アメリカの人々には物語の舞台にされるほど周知されているのではないでしょうか。

ユッカマウンテン放射性廃棄物処分場 - Wikipedia

チーム編成

AチームとBチームの2つに分かれて問題に対する議論は行われました。Aチームのメンバーは人類学者、天文学者、考古学者、環境デザイナー、言語学者、材料(物質)科学者から構成されており、今回紹介される内容はAチームによって報告されたレポートになります。まさしく文理を問わない分野横断的なチームですね。

WIPPの標識システムの要件

放射線廃棄施設の標識システム(marking system)の必要要件は次のようなものになります。

  • その場所にはマーク(標識)を取り付けなければいけない
  • 廃棄物処理とその理由を説明することによってプロセスを完了する必要がある
  • 目的を間違えないようにマークすること
  • 米国および背系銃で同じマークを使うこと
  • コンポーネント(メッセージレベル、システムコンポーネント、材質、およびコミュニケーションのモード)に冗長性を持たせる

提案されたデザインの例

f:id:akimacho:20170910231759g:plain

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参考

Human Interference Task Force - Wikipedia

おわりに

遥か未来の人類のためのデザインを考える話でした。だいぶ前にこの記事の下書きを書いたまま放置してあったので公開することにしました。このような施設や研究があることを共有できたらと思います。また、文献を読むと、このようなデザインを考えた理由とか記述されています。まとめきれなかったので、時間を見つけて追記していきたいです。

誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論

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